お通夜のマナーについて
参列できない場合について
お通夜や葬式・告別式に参列できないときは、できるだけ早く香典を郵送します。
その場合は、お悔やみと参列できない理由を手紙にしたため、現金書留に同封します。
弔事の手紙は、毛筆か薄墨色・濃紺色のインクで書きます。
また、お通夜や葬式・告別式に参列する友人や同僚に香典を託す場合は、連名にすると香典返しの際、遺族側に住所や金額の確認の手間がかかってしまうので、自分のぶんを別に用意します。
香典の準備について
香典を霊前に供えるには、その故人の宗教に即したマナーを守る必要があるので、まず宗教・宗派などを確認します。お通夜か葬式・告別式に持参しますが、両方に参列する場合はお通夜で参列するとよいでしょう。
正式には半紙で包んだ紙幣を、さらに奉書紙で包んで水引きを結びますが、現在は市販の不祝儀袋で代用するのが一般的です。宗教・宗派などにより用いる袋が異なるので注意しましょう。
不祝儀袋は、グレーや紺などの弔事用のふくさか一辺45cm程度の小さなふろしきに包んで持参します。なお、紫色のふくさは慶弔両方に使用できるので重宝します。
☆偶数の金額
かつては「奇数は吉、偶数は凶」といわれ、不祝儀の金額を偶数にしたり、祝儀でも「4(死)」「9(苦)」の数字を忌み嫌ったりする習慣がありましたが、現在はあまり気にされなくなりました。
☆新札
真新しいお札は、前々から用意していたようで失礼にあたるとの考えから、古い紙幣にしたり、真新しいお札に折り目をつけて贈ることが多いようです。
☆香典の金額
香典を贈る場合の金額の目安です。故人との関係や立場により、若干金額が変わってきますのでご注意ください。
故人との関係・・・金額の目安
祖父母・・・1万~3万円
両親・・・5万~10万円
兄弟姉妹・・・3万~5万円
おじ・おば・・・1万~3万円
そのほかの親戚・・・1万~2万円
勤務先の関係者・・・5千~1万円
仕事上の関係者・・・5千~1万円
知人・友人・またその家族・・・3千~5千円
隣近所の人・・・2千円~
☆宗教がわからない場合の水引、表書き、名前の書き方
◆お葬式は、二度と繰り返してほしくないことなので、水引きは結んだらほどけない結び切りにします。色は、黒白、双銀、青白などにします。
◆殺生を避ける弔事では、のしは付けないのが決まりです。
◆「御霊前」は、宗教を問わず使える表書きです。
◆氏名は表書きより少し小さめに、相手が読みやすい文字を書きます。毛筆または筆ペンで、薄墨で書きます。
水引:黒白、双銀、青白などで結び切り
のし:なし
表書き:「ご霊前」
名前:表書きより少し小さめでフルネーム
☆連名で渡す際の水引、表書き、名前の書き方
◆お葬式は、二度と繰り返してほしくないことなので、水引きは結んだらほどけない結び切りにします。色は、黒白、双銀、青白などにします。キリスト教式の場合は、水引きなしの白封筒に。
◆殺生を避ける弔事では、のしは付けないのが決まりです。
◆宗教を問わず使える表書きなので、「御霊前」。浄土真宗の場合は「御仏前」にします。
◆会社名は(株)、(有)と略さずに書き、左に部や課、「〇〇一同」「有志一同」などと、毛筆または筆ペンで、薄墨で書きます。
3名までは連名で氏名を書いてOK。その場合、右から左へ目上の人から氏名を書きます。
◆奉書紙か半紙に、全員の住所と氏名を毛筆か筆ペンで、薄墨で書いて、中包みに入れるのが正式です。ただし、便箋に万年筆(黒インク)で書いても失礼にはなりません。
☆少額のとき、香典返しを辞退するとき
◆裏面に「返礼拝辞(香典返しを辞退する言葉)」と書く。
☆弔問が忌明けになった場合
◆仏式は表書きを「御仏前」にする。
◆「返礼は謹んで遠慮いたします」など、「返礼拝辞」の紙を同封する。
☆中袋の書き方
表側:中央に金額を書きます。ただし、市販のもので金額の記入欄がある場合はそこに書きます。算用数字ではなく、漢字を用いましょう。
裏側:住所と氏名を書きます。こちらも記入欄があればそこに書きます。
☆金額の書き方
金額は漢数字で書きます。表記は正式でも略式でも構いません。
金額の下に「也」は書きません。
正式・・・略式
金 伍阡圓・・・金 五千円
金 壱萬圓・・・金 一万円
金 弐萬圓・・・金 二万円
金 参萬圓・・・金 三万円
金 伍萬圓・・・金 五万円
金 拾萬圓・・・金 十万円
☆お金の入れ方
香典袋に入れる現金は、封筒に入れるか中袋に包みます。市販の香典袋で中袋がついていないときは、半紙か奉書紙で包むと丁寧です。
また、香典袋にお札を入れるときは、お札の表(顔が印刷されている側)が裏を向くように中袋にいれます。
中袋を上包みから外すときは、水引をかけたまま上包みの下から引き抜きます。水引は一度外すとかけ直すのが難しいので、お金を入れて金額や氏名を記入したらそのまま下側から入れて戻すと袋がよれたりしません。
服装の準備について
お通夜に参列する場合は「取り急ぎかけつけました」という意味で平服でもかまわないとされていますが、故人をしのぶしめやかな雰囲気を壊さないのがマナー。最低限の基本ルールを知っておくことが必要です。
☆仕事帰りの場合
仕事帰りに急に通夜だけ行くことになったようなときは、寒色系の地味な通勤着なら参列してもよいでしょう。
男性はワイシャツを白、ネクタイを黒いものに替え、光るネクタイピンはつけない。
女性は薄化粧にしてアクセサリーをはずし、濃い色のマニキュアは落としましょう。
☆男性の喪服
男性は黒一色のブラックスーツが基本ですが、濃紺や濃い灰色の無地のダークスーツでもいいでしょう。
ワイシャツは白、ネクタイ、靴、靴下は黒で統一します。
☆女性の喪服
女性は黒のフォーマルウェアが基本です。ワンピース、スーツ、アンサンブルなどの種類は問いませんが、肌の露出が大きいノースリーブや襟ぐりの大きいもの、レース地や透ける素材のものは避けましょう。
和装の場合は地味な色無地にします。
☆ヘスタイル
ロングヘアはすっきりと上品にまとめる。髪飾りはできるだけ避けるが、つけるときはつやのないリボンやバレッタなどでとめる。
☆メイク
かつては喪服を着るときは、「片化粧」といって、口紅を使わないしきたりがありました。しかし現在では、ノーメイクはむしろ失礼にあたるとされているので、控えめなメイクをしてください。
マニキュアはしないのが原則ですが、透明な色なら構いません。
☆アクセサリー
身につけていいのは白や黒のパール、オニキスなどの一連のネックレス、シンプルな一粒イヤリングなど。二連のネックレスは重なることを嫌う弔事ではしないのが基本です。
指輪は結婚指輪のみOKです。
☆ハンカチ
色柄物は目立つので、白の無地や黒のフォーマル用のものを用意しておきましょう。
☆香水
お香のにおいが立ち込める通夜や葬儀の場に、華やかな香水の香りはふさわしくありません。どうしてもという場合は、オーデコロンくらいにし、つけるのも膝の裏や足首の内側などにします。
☆コート
コートやショールは葬儀式場はもちろん、故人を見送る場でも脱ぐのがマナーです。
極寒の時期、屋外での待ち時間に着るのはやむをえませんが、出棺の際は必ず脱いで見送りましょう。
数珠の作法について
持参するときは念珠入れなどに入れ、使わないときはポケットかバッグにしまいます。畳や椅子の上にじかに置かないようにします。
☆長い数珠(二輪念珠)の作法
合掌以外のときは、二連にするなどで左手に持つ。房は下にする
合掌のときは両手の中指にかける。房は両手の中指の外にでるようにする
☆短い数珠(単念珠)の作法
合掌以外のときは、房を下にして左手で持つ
合掌のときは、両手の人差し指の上にかけ、さらに上から親指を添えるようにして手を合わせる
開始時間について
通夜は古来、鳥獣や悪霊から遺体を守る目的で死者を葬る前夜に身近な人が集まり、棺のそばで明け方まで過ごす儀式でした。現在は前夜のうちに終了する「半通夜」が主流です。
最近の半通夜は、一般的には葬式・告別式の前日の午後6~7時くらいから3時間ほどおこなわれます。
流れについて
式は僧侶の入場、1時間ほどの読経、遺族の焼香、弔問客の焼香、僧侶の法話・退場、喪主あいさつで終了し、そのあと、通夜ぶるまいとなります。
式が終わったら、遺族にひと言あいさつをするか目礼し、早めに辞去します。遺族に述べるお悔やみは、低く小さな声で「このたびはご愁傷様でした」と短く伝えます。
☆NGなマナー
通夜の会場で大きな音を立てたり声を上げたりするのはマナー違反です。
また、故人の臨終の様子をしつこくたずねるのは厳禁。悲しみに暮れている遺族を思いやりましょう。
香典の渡し方について
☆受付がある場合
式場へ到着したら、コートを脱ぐなど身なりを軽くととのえて受付に進みます。そこで係に香典を渡し、芳名帳に住所・氏名を記帳します。
香典を包むふくさから取り出し、表書きを受付の係から読める向きにして渡します。その際「このたびはご愁傷様でございます」「お悔やみ申し上げます」「ご霊前にお供えください」と、ひと言添えます。
☆受付がない場合
焼香で霊前にお参りしてから、表書きを自分のほうに向けて香典を供えます。すでに供えられている香典の上に重ねても構いません。
霊前に供えられた香典は、焼香のあと、遺族が霊前に向けて置き直します。弔問客が前もって逆向きに置いたりしてはいけません。
☆芳名帳への記帳の仕方
芳名帳は、遺族が香典返しをする際に使う住所録にするものです。住所・氏名を丁寧に、わかりやすい字で書きましょう。
仕事関係で上司の代理として参列する場合は上司の名前を記入し、その下に「代」と小さく書く。
また妻が夫の代理を務める場合は夫の名前の最後に「内」と小さく書き、本人が参列したと間違われないようにします。
◎代理出席で名刺を添えるとき
代理で記帳する際、上司からあずかった名刺を渡すときは、名詞の右上に「弔」、自分の名刺を渡すときは「代」と書きます。
名刺が横書きの場合は、左上すみに小さく書くといいでしょう。
着席について
仏式通夜の席次に決まりはありませんが、一般的には祭壇に向かって右側が遺族席、左側が弔問客席に分かれています。
弔問客は左側最前列の祭壇に近い席から、到着順か、故人の上司・先輩、親交の深い人、年長の友人・知人を優先して着席するようにします。
焼香もこの順におこないます。
焼香の作法について
僧侶の読経で通夜が始まると、遺族から順に焼香を行ないます。香には「抹香」「線香」の2つがあり、抹香は葬式・告別式や通夜に、線香は通夜のほか法要などに使います。
焼香方法には立礼と座礼があり、抹香を座礼で焼香する場合、回し線香の形式をとることもあります。
☆線香焼香の作法:座礼の場合
1.遺影に拝礼したら、祭壇の前に進み出て正座し、合掌する
2.右手で線香を取り、ろうそくで火をつける。左手に線香を持ち替え、右手であおいで炎を消す
3.右手に持ち替え、香炉の奥に立てる
4.遺影に再び合掌し、一歩下がって一礼し祭壇の前を退去する
Point:亡くなった人のために一心不乱に祈るという態度をあらわすため、線香は1本でいいといわれています
☆抹香焼香の作法:立礼の場合
1.遺族・僧侶に一礼し、祭壇の一歩手前まで進み出る
2.遺影を向いて拝礼し、祭壇に進み出て合掌する
3.右手の親指と人差し指と中指で抹香をつまみ、目の高さに押しいただき、香炉の中に静かに落とす、という動作を1~3回繰り返す。
4.遺影に再度合掌し、1歩下がって一礼して遺族・僧侶にやや深めの礼をし下がる
Point:抹香を落とす回数は宗派によっては決まりもあるが、1~3回が目安。喪主のまねをするとよい
☆回し焼香の作法:座礼の場合
1.香炉が回ってきたら、会釈しながら両手で受け取り、ひざの前に置く
2.祭壇の方向に合掌する
3.右手の親指と人差し指と中指で抹香をつまみ、目の高さに押しいただき、香炉の中に静かに落とす、という動作を1~3回繰り返す。
4.祭壇を向いて再度合掌する
5.香炉を両手で持ち、次の人に渡す
Point:抹香を落とす回数は宗派によっては決まりもあるが、1~3回が目安。喪主のまねをするとよい
通夜ぶるまいについて
通夜ぶるまいは、近親者や親しい友人・知人が故人とともにするこの世で最後の食事で、供養やお清めの意味があります。
一般の弔問客は、遺族からすすめられたら列席しましょう。たとえ知り合いがいない場合でも、すぐには帰らず、ひと口でも箸をつけたほうがいいでしょう。
通夜ぶるまいの席では、生前の思い出話などを語り合って故人をしのびましょう。もちろん、遺族の負担にならないよう長居せず、頃合いを見計らって退席します。いとまを告げるときは喪主にもあいさつをしますが、取り込んでいる場合は遺族や世話役に断って退出します。
供養になるからと、通夜ぶるまいの席で大酒を飲んで歌ったり踊ったりするのは、もってのほかです。
「冠婚葬祭 マナーの便利帖」より